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イベントレポート:AIとノーコードが織りなす未来 ~ビジネスチャンスとキャリアの可能性~


目次[非表示]

  1. 1.概要
  2. 2.オープニング:AIとの共創で広がるノーコードの可能性
  3. 3.基調講演:宮崎翼氏が語る「AI × ノーコードでDXを加速!アプリ開発ワークショップ」
  4. 4.パネルディスカッション:独立ノーコーダーが語る「生の声」
    1. 4.1.独立のきっかけと直面した「壁」
    2. 4.2.ノーコードで得られる仕事:具体的な形と企業のニーズ
    3. 4.3.案件獲得の秘訣とノーコーダーのメリット
    4. 4.4.ノーコード業界の未来:拡大する市場と「穴場」としての可能性
  5. 5.西澤氏による講演:学生起業からノーコード開発の最前線へ

概要

2024年4月10日、一般社団法人No coders JAPAN協会は、AIとノーコードの融合がもたらすビジネスチャンスとキャリアの可能性に焦点を当てたイベントを開催しました。

本イベントでは、協会の高橋翔理事によるオープニングから始まり、宮崎翼氏による基調講演、そして第一線で活躍するノーコーダー3名によるパネルディスカッションが行われ、参加者はAIとノーコードの最前線を肌で感じることができました。



オープニング:AIとの共創で広がるノーコードの可能性


イベントの幕開けは、当協会理事である高橋 翔(Sho T)氏によるオープニングスピーチでした。No coders JAPAN協会は2020年の設立以来5年間、個人のノーコーダーだけでなく、ノーコードベンダーやエコシステムパートナーとの交流の場を提供してきました。

近年、ノーコードやAIを活用したアプリ開発がビジネスとして本格的に成立しつつある現状を踏まえ、高橋氏はAIがもたらす未来に対するポジティブな展望を語りました。

AIが仕事を奪うというネガティブな見方がある一方で、協会はAIと人間が共創する未来も描いています。

高橋氏は、現在の「ノーコードでアプリを作るフェーズ」から、今後はノーコードとAIを使って「エージェント」を作り出すフェーズへと移行すると述べました。これは、人間がAIエージェントを開発し、そのエージェントが多様なアプリを生成するという「1対N×N」の世界を意味し、仕事の市場はむしろ拡大するという見通しを示しました。つまり、AIが全ての仕事を代替するのではなく、人間がAIエージェントを創造し、それを通じてさらに多くの価値を生み出す時代が到来すると予測しているのです。

高橋氏は、参加者が本イベントで得られる具体的な話を通じて、交流会を存分に楽しんでほしいと期待を込めて締めくくりました。


基調講演:宮崎翼氏が語る「AI × ノーコードでDXを加速!アプリ開発ワークショップ」


続いて行われたのは、宮崎翼氏による「AI ✖️ ノーコード でDXを加速する」をテーマとした基調講演です。

宮崎氏は、愛媛県新居浜高専卒業後、子供向けプログラミングサークル「CoderDojo稲城」や、後に事業売却した「NoCodeCamp」の運営に携わってきました。現在はノーコード人材紹介プラットフォーム「AppTalentHub」を立ち上げ、精力的に活動されています。

ノーコードキャンプは2020年に設立され、短期間で200〜300名規模のコミュニティに成長。DMMでは人気のサロンとして表彰される経験も、書籍「ノーコードシフト」の出版、東洋経済へのコラム寄稿など、多岐にわたる活動を展開しました。


開発案件ではBubble、Airtable、FlutterFlowなどを活用し、機械学習アプリケーションの開発も手掛ける他、岡山市や愛媛県などの自治体向けに研修カリキュラムも提供。最近では、NoCodeCampをM&Aにより売却し、新たな事業フェーズに入ったことを報告されました。

宮崎氏は、フリーランスや副業において「自分を伝える力」が重要であり、その効率化にAIを活用すべきだと強調しました。参加者への問いかけでは、AIを業務効率化や資料作成、データ分析に利用している人が多いことが判明。宮崎氏は、AIが提案書作成からウェブ開発まで幅広く活用できることを示し、特にアプリ開発におけるAIの可能性を力説しました。

講演の後半では、参加者同士の交流を促すため、簡単なワークショップが実施されました。参加者はAI(ChatGPTやGeminiなど)を使用し、「自分の趣味」「1日の活動」「これからやりたい仕事」のいずれかについて紹介文を作成。その後、隣の人と30秒で自己紹介を行う時間が設けられました。


宮崎氏によると、アイデア出しから形にするまで、AIを活用することで素早くプロトタイプを作成し、微調整のみ人間が行うという開発サイクルが可能になるとのことです。具体的なツールとして、企画書作成にAIを、そしてプロトタイプ作成には「V0」のようなツールを活用する方法が紹介されました。


この講演は、AIとノーコードの組み合わせが、個人のスキルアップや事業のDXをいかに加速させるかを具体例とともに示す内容でした。


パネルディスカッション:独立ノーコーダーが語る「生の声」


独立したノーコーダー3名によるパネルディスカッションも盛況でした。

独立のきっかけ、直面した課題、そしてノーコードで得られる仕事について活発な意見交換がされました。


独立のきっかけと直面した「壁」

  • 西澤氏:大学時代にアプリ開発を志すも、開発会社への高額な見積もりに直面。自力での開発を模索する中で、プログラミングでは時間が足りないと判断し、ノーコードツール「Adalo」と出会ったことをきっかけに独立を決意しました。


  • 木本氏:2019年に個人事業主としてIT業界で独立後、プログラミングスクールを卒業しウェブ制作を開始。しかし、ウェブアプリケーション開発への思いを抱え、2021年にノーコードキャンプと出会い、ノーコードの可能性を知り自身のスキルと組み合わせることで事業を拡大したと語ります。

独立後の予期せぬ壁として、社会保険料の高さ経費の多さが挙げられました。また、AIの台頭は、ノーコード開発の将来を脅かす可能性のある「想定外の壁」として認識されたものの、ノーコードツール自体もAIとの連携を進めているため、「挽回」の可能性もあるというポジティブな見方も示されました。

ノーコードで得られる仕事:具体的な形と企業のニーズ

ノーコーダーに依頼される仕事については、以下のような見解が示されました。

  • アプリ開発の具体的な形にする仕事:アプリケーションの要件を把握し、ドキュメント化する仕事と、それを技術的に形にする仕事の二つに大きく分けられます。ノーコーダーは、各種ノーコードツールを習得することで、アプリを「形にする」仕事を受注できます。


  • 「何でもいいから新しいことをやりたい」企業からの依頼:ノーコードはトレンドワードとして企業の注目を集めやすく、特にAIやDXに関心の高い先進的な大企業からの依頼が増えています。これらの企業は「とにかく新しいことをやりたい」「予算があるからやろう」といった形で、要件が固まっていない状態でも積極的にノーコーダーに仕事を依頼する傾向にあります。これはノーコーダーにとって大きなメリットです。



案件獲得の秘訣とノーコーダーのメリット

案件獲得の秘訣としては、以下の点が挙げられました。

  • コミュニティへの貢献:特定のノーコードツールに特化し、そのコミュニティ(フォーラム、イベントなど)に積極的に参加し、貢献することで、企業担当者の目に留まりやすくなります。


  • 実績の積み重ね: 多くのアプリを開発する経験は、ノーコーダーとしての信頼性を高めます。

ノーコーダーのメリットとして、ノーコードベンダーやコミュニティの存在が強調されました。プログラミングが孤独な作業であるのに対し、ノーコードはパートナーやコミュニティとの協力体制が充実しており、情報共有や仕事へのつながりが生まれやすい環境です。


ノーコード業界の未来:拡大する市場と「穴場」としての可能性


ノーコード業界は現在も拡大しており、今後さらに市場が広がる可能性があります。ノーコーダー同士がライバルでありながらも協力し、業界全体を盛り上げていくことの重要性が語られました。また、西澤氏は、ノーコード案件の数はまだ少ないものの、ノーコーダーの数自体も少ないため、「穴場」であると述べ、ノーコード市場の大きな可能性を示唆しました。


西澤氏による講演:学生起業からノーコード開発の最前線へ


最後に、当協会の理事でもある西澤氏が、ご自身の経験を交えながらノーコード開発事業の最前線を語りました。


西澤氏は、2ヶ月に大学を卒業したばかりの学生起業家です。大学2年生の時に、漠然と企業に憧れ、自社アプリの開発・販売を志しました。そこで出会ったのが海外製ノーコードツール「Adalo(アダロ)」でした。Adaloでアプリを自作・リリースしたものの、利用者が伸び悩んだ経験から、アプリ開発のニーズがあることに気づき、Adaloを使った受託開発事業をスタート。これが、現在のノーコードシステム開発事業のきっかけとなっています。



西澤氏の会社では、主にClick、サスケWORKS、FlutterFlow、Bubbleなどのノーコードツールを活用し、企業のアプリケーション構築支援や導入支援を行っています。当協会の理事も務め、各ノーコードツールのパートナー企業としても活動されています。

具体的なノーコード開発事例として、以下の4つが紹介されました。

  • サスケWORKSを活用した社内業務改善アプリ:お問い合わせ管理アプリ、お問い合わせに対する自動配信アプリなど。これらは1〜2ヶ月で開発可能であり、ノーコードの迅速な開発を象徴する例です。


  • コミュニティ運営会社向け交流会情報管理アプリ:ピンポイントな業務改善ニーズに対応した事例です。


  • Clickを活用したフィットネスジム向けアプリ:チェックイン機能、月額・都度利用の決済機能、契約管理機能、運営方針の整備機能など、ジム運営に関わる全ての機能をアプリ内で完結させた事例です。

  • 芸能事務所向けカレンダー共有アプリ:Clickを使い、芸能事務所の秘密保持に対応したデザインとマッチング機能を備えたカレンダー共有アプリを開発しました。

西澤氏は、Clickを3ヶ月間きちんと学んだエンジニアが、上記のカレンダー共有アプリのような複雑なシステムを開発できることを強調し、「誰でもアプリを作れる時代になっている」という実感を語りました。講演は、参加者との交流を通じて、ノーコードの可能性をさらに深めたいという意向で締めくくられました。


今回のイベントを通じて、AIとノーコードがもたらすビジネスの新たな可能性、そしてそれを活かすための具体的なキャリアパスが明確に示されました。当協会は、今後もノーコードの普及と発展に貢献してまいります。

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