【イベントレポート】生成AIがマーケティングを "既に" どう変え始めているか? for 経営層/マーケッター/etc
目次[非表示]
- 1.概要
- 1.1.動画アーカイブ視聴
- 2.第1部:株式会社プレスマンによる「生成AI×マーケ事例」
- 2.1.マーケティング現場の課題と解決策
- 2.2.AIを活用した具体的なプロセス
- 2.3.導入効果と成果
- 2.4.生成AI×現場の「1stケース創出の1ヶ月無料伴走キャンペーン」等について
- 2.5.情報経営イノベーション専門職大学の学生による発表
- 3.第2部:生成AIの高度活用事例 by エボラニ株式会社・WACA
- 3.1.顧客理解の深化と実践的なツール活用
- 3.2.データ解析・構造化の革新的アプローチ
- 3.3.EC分野での革新的な活用
- 4.第3部:トークセッションで浮き彫りになった3つの重要テーマ(from NoCoders Japan協会, WACA)
- 5.総括
概要
2025年1月23日に行われた、NoCoders Japan(ノーコーダーズジャパン)協会とウェブ解析士協会(WACA)の合同主催による本イベントは、「生成AIのマーケティング現場」での実践的活用に焦点を当てたイベントです。経営者やマーケター、企業のマーケティング部門を対象に、既に進行中の具体的な活用事例と実践手法を共有することを目的として開催されました。
生成AIへの注目度が高まる一方で、実務での具体的な活用方法に課題を抱える企業が多い現状があります。特に中小企業では活用率が10%未満にとどまっているという現状を踏まえ、このギャップを埋めるために本イベントが企画されました。
動画アーカイブ視聴
以下に動画アーカイブを視聴することができます。
第1部:株式会社プレスマンによる「生成AI×マーケ事例」
プレスマンの代表、関口氏と高橋氏により、生成AIを活用したマーケティング改革の具体的な取り組みが紹介されました。日本橋人形町に拠点を置く同社は、ノーコード開発やDX支援を得意とし、特にEC領域でのマーケティング支援において豊富な実績を持っています。
※生成AI×現場の「1stケース創出の1ヶ月無料伴走キャンペーン」が紹介されました。こちら から応募することが可能です。
マーケティング現場の課題と解決策
現代のマーケティング現場では、集客手段の多様化とスピードの加速、高速なPDCAサイクルの要求、経験値への依存など、複雑な課題が山積しています。プレスマンはこれらの課題に対し、AIを戦略的に導入することで解決を図りました。
特に注目すべき事例として、紙製品販売の松本洋紙店との協働プロジェクトが紹介されました。同店は20年以上前からECに参入し、すでに300本以上のYouTube動画コンテンツを保有していました。このコンテンツ資産を最大限に活用するため、プレスマンは効率的なAI活用の仕組みを構築しました。
AIを活用した具体的なプロセス
プレスマンは、AIツールを「インプット」「プロセス」「アウトプット」の3段階で整理し、効率的なワークフローを確立しました。具体的には、Glaspを使用してウェブコンテンツを収集し、ChatGPTでテキスト加工を行い、最後にSEO最適化を施すという流れです。
このプロセスにより、従来20時間以上かかっていた作業を20分程度まで短縮することに成功。特筆すべきは、このシステムがAIによる単純な文章生成ではなく、既存の高品質なコンテンツを効率的に別メディアに展開する仕組みという点です。これにより、Googleの生成AIコンテンツに対する評価低下といったリスクも回避しています。
導入効果と成果
この取り組みにより、以下の顕著な成果が得られました。
- コンテンツ発信量が5倍に増加したことで、より多くの顧客接点を創出
- 213時間の工数削減を実現し、より戦略的な業務への時間配分が可能に
- 業務効率が85%以上向上し、残業時間の削減にも貢献
さらに重要な点として、これらの成果がわずか1ヶ月という短期間で達成されたことが挙げられます。プレスマンは、最初の成功事例(ファーストケース)を速やかに確立し、そこから段階的に展開していく方法を採用しました。
生成AI×現場の「1stケース創出の1ヶ月無料伴走キャンペーン」等について
プレスマンは、生成AI×マーケティングの実践的な導入支援として、「1stケース創出の1ヶ月無料伴走キャンペーン」を展開しています。このキャンペーンの特徴は、1ヶ月無料で「生成AI×現場」の具体的な成果創出までを伴走・実現する点にあります。
具体的なアプローチ
- 30分の無料相談から開始
- 各企業の現場に適した独自の1stケースを設計(1ヶ月無料 / 対象企業は応募の中から厳選)
- AIツールの選定から実装まで一貫したサポート
1ヶ月の初期支援後も、必要に応じてAIツールのアップデートサポートや運用支援を継続することが可能です。これにより、持続可能なAI活用の体制構築を支援します。
このキャンペーンは、日本企業のAI活用促進を目指す取り組みの一環として位置づけられており、特に中小企業でのAI活用率が10%未満という現状を改善することを目指しています。
情報経営イノベーション専門職大学の学生による発表
第一部の最後には、情報経営イノベーション専門職大学の1年生2名による発表が行われました。
まず渡辺氏は、プログラミング学習とAI活用について実践的な知見を共有しました。日の出株式会社でのインターン経験を持つ同氏は、プログラミングの基礎習得に通常必要とされる300-600時間という時間を、生成AIの活用で大幅に短縮できることを示しました。具体例として、ChatGPTを用いた営業メール自動送信システムをデモンストレーション。スプレッドシートと連携したシステムにより、送信管理の自動化にも成功しています。さらに、競合他社のニュースや株価情報を自動で収集し、スマートフォンに通知するシステムなど、実用的なアプリケーション開発事例も紹介しました。
続いて大熊氏は、メタバース空間のクリエイター育成プロジェクトでの経験を基に、生成AIを活用したプレゼンテーション資料作成の効率化について報告しました。ChatGPTとGamma.appを組み合わせることで、従来10時間を要していた資料作成を3時間に短縮できたとのことです。特に効果的だったのは、AIに対する明確な指示の出し方と、目的に応じた適切なツールの選択でした。同時に、AI生成コンテンツの最終調整における人間の役割の重要性も指摘しました。
両者の発表は、生成AIの実践的な活用方法を示すだけでなく、初心者でも取り組めるアプローチを提示した点で、参加者に大きな示唆を与えるものとなりました。大学と企業の産学連携の一環として位置づけられたこの発表は、次世代のAI活用の可能性を感じさせる内容でした。
第2部:生成AIの高度活用事例 by エボラニ株式会社・WACA
積氏と井水氏より、生成AIを活用した高度な調査・分析手法等が紹介されました。
顧客理解の深化と実践的なツール活用
特に注目すべき点として、ChatGPTを活用したペルソナ分析では、従来の定量的なデータだけでなく、仮想的な対話を通じて潜在的なニーズや不安要素を深掘りする手法が示されました。例えば、資格試験の受験検討者のペルソナ分析では、年齢や性別といった基本属性に加え、学習意欲や時間的制約、費用面での不安など、より具体的な心理的要因まで抽出できることが実演されました。
また、Google Geminiの「ディープリサーチ機能」については、複数の情報源を同時に分析し、より信頼性の高い調査結果を得られる点が強調されました。特徴的なのは、調査プロセスが可視化され、参照元が明確に示される点で、従来のAI活用と比較して情報の信頼性が大きく向上しています。
データ解析・構造化の革新的アプローチ
登壇者らは、「Felo」、「Genspark」といった最新のAIツールを活用したデータ解析・構造化手法も紹介。特筆すべきは、これらのツールが単なる情報の要約だけでなく、情報の関連性や構造を視覚的に表現できる点にあります。
例えば、自治体のデータ分析では、複数の自治体が公開している50-60ページ規模の政策文書を同時に分析し、共通する課題や特徴的な取り組みを数分で抽出できることが実演されました。また、「AIエージェント機能」を活用することで、分析作業を自動化し、結果をメールで通知する仕組みも紹介されました。
PDFやYouTube動画の分析では、「Notebook LM」などのツールを活用することで、コンテンツの要点を対話形式で理解できる新しい学習・分析手法が示されました。
EC分野での革新的な活用
- ファッション領域での生成AI応用
- 商品着用イメージの自動生成(Genspark活用)
第二部では、上記のように多くのAIツールとデモンストレーションが紹介されました。
例)
- ChatGPT「ペルソナ分析」「PDF分析」等
- Gemini「Deep Research」
- Mapify「構造化/可視化」
- Perplexity「検索&分析」
- Felo「プレゼン自動生成、Canva連携」
- Genspark「ファクトチェック」「ファッションビジュアライゼーション」
etc
これらのツールの多くが無料もしくは低コストで利用可能であり、特別な技術知識がなくても活用できる点が強調されました。両社からは、参加者向けに各種ツールの試用コードも提供され、実践的な活用を促進する姿勢が示されました。
第3部:トークセッションで浮き彫りになった3つの重要テーマ(from NoCoders Japan協会, WACA)
テーマ1:企業活動のデータ化課題に対する、AI登場による新潮流
従来のデータ化は、構造化データの収集と整理が中心でした。しかし、マルチモーダルAIの登場により、この概念は大きく変化しています。例えば、高級レストランでのワインボトルの画像認識による在庫管理や、会議の音声データからの自動的な知見抽出など、非構造化データの活用が現実のものとなっています。
特に注目すべきは、「データに話しかける」という新しいインタラクションの形です。営業部門の会話データを他部門が分析し、新たな知見を得るといった、部門を超えたデータ活用が可能になっています。これは、従来の「データ分析」という概念を超えた、より直感的でインタラクティブなデータ活用の形を示しています。
テーマ2:AI×データ分析の可能性と実践
AIによるデータ分析の特徴は、目的から逆算したアプローチが可能な点です。例えば「売上を10%向上させたい」という目標に対して、AIが自律的に必要なデータを特定し、分析方法を提案し、具体的な施策まで導き出すことができます。
また、「自転車に乗る」という比喩で示されたように、AIとのインタラクションは実践を通じて学ぶべきという重要な指摘がありました。理論的な理解よりも、実際の使用経験を通じて、AIツールの可能性と限界を理解することの重要性が強調されました。
テーマ3:生成AI活用における信頼性とリスク - プロとしての活用法
生成AI活用のリスク管理について、重要な区別が示されました。ChatGPTのような言語モデルは「覚えている情報から作文する」のに対し、検索系AIは「実際のソースを確認しながら回答を作成する」という違いがあります。この特性を理解し、用途に応じて適切なツールを選択することの重要性が指摘されました。
さらに、品質管理の観点から、複数のAIを活用したクロスチェックの有効性も示されました。例えば、同じ質問を異なるAIツールに投げかけ、回答を比較することで、より信頼性の高い結果を得られるという実践的な方法論が共有されました。
ファクトチェックツールの進化も注目されます。特にGensparが提供する自動ファクトチェック機能は、27の情報源を自動で確認し、情報の信頼性を検証する機能を備えており、今後のAI活用における品質管理の新しい形を示しています。
最後に、AI活用の「プロフェッショナリズム」について重要な指摘がありました。AIは仕事を奪うのではなく、むしろプロフェッショナルの可能性を広げるツールとして捉えるべきという視点です。例えば、デザイナーやフォトグラファーなどのクリエイティブ職種において、AIは新しい表現手法を提供し、創造性をさらに引き出す可能性が示されました。
総括
このように、生成AIはマーケティング現場で既に具体的な変革をもたらしています。特に、データの収集・分析・活用の領域で、従来は難しかった非構造化データの活用までも可能にし、業務効率の大幅な向上を実現している。ただし、適切なリスク管理と運用ガイドラインの整備等も同時に重要です。
今後の展開として、各企業がまずは小規模な実践から始め、段階的に活用領域を拡大していくアプローチが推奨されます。特に、音声データの活用など、取り組みやすい領域から着手することで、組織全体のAI活用能力を段階的に向上させることが可能であると総括されました。