
【事例集】ノーコード ローコード事例を徹底解剖。スタートアップから大企業のDXまで。
今回は、ノーコード/ローコードの「事例」について見ていきたいと思います。
ノーコード/ローコードは、スタートアップや個人から大企業まで、幅広く活用され始めています。
ケースとしても、新サービスのモック作成や、新規事業でのPoC活用、現場主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)、業務自動化、営業やマーケティング活用、組織改善・改革の推進など、多岐にわたります。
目次[非表示]
- 1.スタートアップや新規事業でのノーコード活用事例
- 1.1.[事例] 日本での事例(MVP(最小限のプロダクト)開発等事例)
- 1.2.[事例] 海外での事例(地方支援・スタートアップ事例等)
- 1.3.[参考] コロナ禍で「ノーコード × EC」も活用拡大
- 2.複数のノーコードツールを組み合わせた事例
- 2.1.[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「無人店舗」を実現
- 2.2.[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「脱エクセルCRM管理」を実現
- 2.3.[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「予約決済アプリ開発」を実現
- 2.4.[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「EC/D2Cの構築/運用/マーケ等」を実現
- 2.5.[参考] 様々なノーコードに特化した即戦力の人材&チーム提供「NOCODO Biz」
- 3.現場主導の「DX × ノーコード」事例(製造現場・営業/マーケ・事務、等)
- 3.1.[事例] 「製造現場」等に強い、モバイルアプリノーコード「Unifinity」の事例
- 3.2.[事例] 「営業/マーケ」をノーコード「ferret One」で強化。営業マンを強力補助
- 3.3.[事例] ノーコードで業務アプリが簡単に作れる「サスケWorks」の事例
- 4.大企業でのノーコード&ローコード活用事例
- 4.1.[事例] 大和ハウス工業はノーコードツール「SmartDB」で申請業務の自動化
- 4.2.[事例] 京セラは、ノーコードツール「Platio」で巨大倉庫の在庫管理をスマート化
- 4.3.[事例] JALは「AWS/Salesforce/Kintone」によるノーコード/ローコード活用で、業務部門によるセルフ開発を加速
- 5.まとめ
スタートアップや新規事業でのノーコード活用事例
ノーコードのブームが始まった要素の一つとして、スタートアップや新規事業のMVP(実験用プロダクト)をノーコードで超高速で作成する成功例があります。
海外では数年前から話題を帯びており、近年の資金調達動向でもありました。
[事例] 日本での事例(MVP(最小限のプロダクト)開発等事例)
1. ノーコードで開発したゲーマー向けの募集プラットフォームフォーム「CLITCH」
ゲーマー向けの募集プラットフォーム「CLITCH」は、ノーコードサービス「Bubble」で高速開発し、ユーザからの改善案を即時反映し、CVCから1000万円の資金調達を実施した事例です。
2. 飲食の事前注文・決済アプリ「SmartDish」をノーコードで高速開発→加盟店100店舗突破
2020年6月にコロナの影響を受けた飲食業界に貢献するために生まれた事前注文・決済アプリのSmartDish(スマートディッシュ)は、NoCodeサービス「Adalo」でのスピード開発でMVPをリリースし加盟店は100店舗を突破。その後スケールに向けてFlutterに切り替えリニューアルを果たす。
3. 大学の講義情報等を扱う「Union」をノーコードで開発し資金調達
Union(https://union-jp.site)のミッションは『大学生活をスマホ上で完結させる』ことです。コロナ下により学生間での情報格差、機会格差が露呈し、それまでの旧態依然としたオフラインを前提とする大学生活の問題が明るみに出ましたが、ノーコードツール「Adalo」を活用しこの問題にアプローチ。VCから1000万円調達を受け、正式版をFlutterに切り替え開発。
「CLITCH」と「SmartDish」は、「NoCode Summit 2021(ノーコードサミット2021)」のパネルディスカッションでもお聞きしました。詳細は以下の動画をご参照ください。
[事例] 海外での事例(地方支援・スタートアップ事例等)
1. コロナで苦しむ地元企業を支援するためのデジタルギフトカード購入サービス「Support Local」
2020年、コロナ関連で発生した課題にノーコードで解決する事例がインパクトを呼びました。その一例が、地元企業を支援するためのデジタルギフト購入サービス「Support Local」でした。使用ノーコードサービスは「Bubble」で、3日でローンチ。話題になりローンチから1週間でUSA Todayが買収することになりました。
2. アート売買プラットフォームサービス「Kollecto」
アート売買プラットフォームサービス「Kollecto」は、ノーコードでLP制作ができる「Strikingly」と、ノーコードで問い合わせフォームが作れる「Typeform」、決済を連携できる「Stripe」etcを用いてMVPローンチ。MVPで300万円ほど売り上げ、500Startupsのアクセラレータープログラムに選出されました。その後、ノーコードツール「Bubble」で再構築。
[参考] コロナ禍で「ノーコード × EC」も活用拡大
コロナ禍で実店舗からECへの流れは小規模店まで波及し、ノーコードでもネットショップが立ち上げられる「Shopify」などが世界的に飛躍しました。
D2Cの波もあり、オンラインでの直販ニーズは高まっており、SNS等を活用した発信やブランディングと合わせて、EC領域のノーコードによるアジャイル構築・運用等は、今後も注目となっています。
出所:Shopify Investor Deck Q4-2020
Shopifyを使って制作されたノーコードEC事例は以下にまとまっています。
<参考:Shopify事例集↓>
複数のノーコードツールを組み合わせた事例
ノーコード・ローコードの時代では、一つのシステムやツールを導入するというよりは、個々に特化した強みを持つ "複数のノーコード ローコード ツールを組み合わせる" 「コンポーザブル」という考え方が出てきています。
以下のリンク先コラムでご紹介したように、ノーコード/ローコードは「複数のツールやハブを組み合わせて」実現することが、今後一般的になるでしょう。
ここでは、それらの事例をご紹介します。
[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「無人店舗」を実現
無人のレンタルドレスショップの事例です。使用ノーコードサービスは「LINE」「Webflow」「Shopify」「Airtable」「Integromat」等で、エンジニアなしで1ヶ月でリニューアルローンチが行われています。
ノーコードで構築しただけでなく、店舗にも店員が1人もいない(無人店舗)を実現し、システム外注費や人件費を節約できたことで、リーズナブルな価格設定でサービスを提供できるようになったようです。
[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「脱エクセルCRM管理」を実現
エクセル、Google sheetから手作業でCRM(今回はノーコードツール「HubSpot」)への移行時に入力のし忘れや、利用者全員に情報が行き渡らず現場が混乱したり、マネージャーも正しい数値が見れなくなることがあります。 そこで、ノーコードツール「Integormat」を組み込み、相互同期を自動化することで、現場の混乱を限りなく抑えたデータ移行を行うことが可能となった事例です。
参考)使用ノーコードサービス:「Integromat」「Hubspot」等
※ノーコードサミット2021の以下動画が参考になります。
[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「予約決済アプリ開発」を実現
熊本県の自動車販売会社(ユナイテッドトヨタ熊本株式会社)で、シェアオフィスの予約・決済システムが必要となり、 エンジニアがいないという環境の中、アプリ開発経験ゼロの営業マン2人でadalo、zapier、sendinblueを組み合わせ、開発期間1か月半というスピードで「シェアオフィス予約・サブスクリプション決済アプリ」を開発リリースした事例です。エンジニアのいない企業でもノーコードを活用することで課題解決できた事例となります。
参考)使用ノーコードサービス:「Adalo」「Zapier」「Sendinblue」
※ノーコードサミット2021の以下動画が参考になります。
[事例] 複数ノーコードを組み合わせて「EC/D2Cの構築/運用/マーケ等」を実現
ECサイトの構築、運用、マーケティング、日常業務に、各種ノーコードツールを利用することが浸透し始めています。これまでは多作業・人員をかけて構築・運用していたECの業務プロセスを解剖し、各タスクを数分単位で、自動化、連携化する取組を「Shopify」や「Integromat」「Airtable」「Slack」等、複数のノーコードツールを有効利用することで実現した事例です。
参考)使用ノーコードサービス:「Shopify」「Integromat」「Airtable」「Slack」等
※ノーコードサミット2021の以下動画が参考になります。
[参考] 様々なノーコードに特化した即戦力の人材&チーム提供「NOCODO Biz」
上述のように、様々なノーコード/ローコードを、多様なシーンで組み合わせて活用する、人材やチームの形成が必要になっていきます。ノーコード/ローコードを活用した人材やチーム形成に、「NOCODO Biz(ノコド ビズ)」といった人材サービスも出てきています。
現場主導の「DX × ノーコード」事例(製造現場・営業/マーケ・事務、等)
ノーコードは、現場主導のDXの推進にも活用され始めてきています。
以下では、いくつかの現場種別ごとの事例を紹介していきます。
[事例] 「製造現場」等に強い、モバイルアプリノーコード「Unifinity」の事例
製造の現場では、技術によってフローや点検方法が異なり、現場ごとのニーズがニッチであるため、該当のSaaSサービス等が存在せず、紙を中心としたオペレーションが多く残っています。
そのため、作業者ごとの報告内容のばらつき、作業品質の平準化が困難。
外注コストの問題もあり、DXが進んでいないケースがまだ多いようです。
モバイルアプリノーコード「Unifinity」では、現場でよく使う機能がマテリアルになっており、それらを組み合わせることで、現場ごとの異なるニーズをアプリ化することができます。
【事例:(株)ジーテクトさま】
→現場でデータ入力できるようになったことで、事前準備や現場訪問後の資料作成時間などが1人あたり1日1.5時間程度減らせた
【事例:(株)細田工務店さま】
→専門人材なしに「自分たちでこうあるべき」というものを作れて、複雑だった手順を簡易なUXのアプリに作り替えて改善できた。営業効率も上がり、現場だけでなく管理者側からも高評価
(【IT Media基調講演】NoCode市場の現在地 より抜粋)
[事例] 「営業/マーケ」をノーコード「ferret One」で強化。営業マンを強力補助
営業の現場では、営業マンのリソースの問題もあり、顧客に対して常にタイムリーな提案ができるわけではありません。Webでコンテンツ等を配信するにも、外注を介してページを更新するなど、コストも手間もかかってしまうケースが多くあります。
そこで、自社の魅力をタイムリーに更新し提案できるよう、ノーコードベースでWebベースのコンテンツマーケを可能にするのが「ferret One」になります。
【事例:アピ(株)さま】
→ノーコードで休眠顧客や既存顧客にコンテンツマーケを更新していったところ、それが「御用聞き営業」のような機会創出に繋がり、3ヶ月で80件も問合せが来た
【事例:(株)新菱さま】
→コンテンツ配信までの時間がノーコードにすることで大幅短縮でき、十分に豊富なコンテンツ配信が可能となり、今まで想定していなかった業界まで商談が増え(Web経由の商談件数が0→40件以上へ)、自事業の可能性を再発見できた
(【IT Media基調講演】NoCode市場の現在地 より抜粋)
[事例] ノーコードで業務アプリが簡単に作れる「サスケWorks」の事例
業務/事務の現場では、非エンジニア中心の職場であり、紙業務やエクセル業務が多く、データが個々のPCに散らばり情報やノウハウの共有に差が出てしまい、業務が属人化しやすい問題があります。
「サスケWorks」では、業務アプリを非エンジニアでも簡単に作れる仕様となっており、スマホやPCさえ使えれば、世代やスキルに関係なく情報やノウハウを円滑に伝達する体験を構築可能です。
【事例:砂町銀座商店街さま】
→非エンジニアであるパチンコ屋さんの店長が「書類一括管理」「相談アプリ」「タスク管理アプリ」をノーコード「サスケWorks」で構築し、商店街内部で実施する事務作業および、外部への発信活動をDX化。それまで属人化していた数多くあるメディアからの取材対応や商店街関連で発生した仕事の依頼等を素早く対処できるようになる土台を作ることができた
(【IT Media基調講演】NoCode市場の現在地 より抜粋)
このように、非エンジニアでも様々な業務のシーンに対して、ノーコードによるドラッグ&ドロップベースでワークフロー化し、現場のニーズに応える業務アプリを構築することが可能になってきています。
大企業でのノーコード&ローコード活用事例
大企業においても、現場主導のDX推進などにおいて、ノーコード・ローコードが活用され始めています。ここでは、そのような事例を紹介します。
なお、その前に、以下の図を見ていただきたいと思います。
規模が大きな範囲でのDXにおいては、様々な種類のLCAP(ローコードアプリケーション)やSaaS、ノーコードツールなどを組み合わせて対応する形になります。
ノーコードにおいては、近年では現場寄り・ステークホルダーなど市民開発寄りのところから活用が始まっており、全てのケースに1つのツールで対応するというスタンスではなくなってきているのがポイントです。
図は引用: https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00317/122000004/?SS=imgview&FD=1073278374
これは、上述の"複数のノーコード ローコード ツールを組み合わせる" 「コンポーザブル」の発想です。→ 「プロコード(プログラミング)+ローコード+SaaS+ノーコード」の組み合わせ
[事例] 大和ハウス工業はノーコードツール「SmartDB」で申請業務の自動化
引用(https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00129/112400043/):
同社は業務効率化の柱を「申請書類関連の電子化」に定めた。そして次に着目したのがノーコード/ローコード開発ツールだった。相川センター長は情報システム部と協力して複数のツールを比較検討し、最終的にドリーム・アーツが提供するノーコード開発ツール「SmartDB」の採用を決めた。相川センター長は「開発のしやすさが何よりもよかった。また当社の複雑な承認フローにも対応できるワークフローの仕組みが決め手となった」と話す。
(中略)大和ハウスの人事部は一連の申請業務の電子化により、年間数万枚の紙を削減できる見込みだ。また、紙を郵送でやり取りする必要がなくなり、申請が承認されるまでの期間を大幅に短縮できたという。加えて新型コロナウイルス下で出社を制限されるなか、テレワーク環境でも人事部が申請内容をチェックできるようになった。
[事例] 京セラは、ノーコードツール「Platio」で巨大倉庫の在庫管理をスマート化
これまで紙で運用していた棚卸リストをノーコードでアプリ化。1日かからずに作成、運用を開始した。作成されたアプリは使い勝手の良さから全国の拠点への展開が始まっている。
これにより、アプリ上で在庫数を共有できるため、用紙の受け渡しの手間と移動の時間を削減。また、棚卸報告のデータ化により在庫照合を自動化。目視チェックによるミスがなくなり、在庫精度の向上が実現した。
[事例] JALは「AWS/Salesforce/Kintone」によるノーコード/ローコード活用で、業務部門によるセルフ開発を加速
引用(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/111600262/111600002/):
日本航空(JAL)は空港での運航情報提供や混雑状況可視化といった幅広い分野でノーコード/ローコードツールを活用している。
(中略)2019年8月ごろまでに「AWS」「Sales force Lightning Platform」「kintone」を標準基盤として選定し、平行して2020年7月までにデータ基盤整備など利用環境を整えた。標準基盤を設定することにより「案件ごとに一から開発ツールを選ぶ必要がなく、知識や経験の習得に必要な人的資源を集中できた」
その他にも、東京センチュリー/ヨネックス/米国トヨタ/SOMPO/みずほ等、様々な大企業がノーコード/ローコードを駆使してDXを始めていることがニュースになっています。
(上記は、当協会の調査資料より抜粋)
まとめ
このように、スタートアップから大企業まで、様々なノーコード/ローコードの事例が出てきています。特に「DX」の文脈では、SaaSに加えてノーコード・ローコードによる現場主導/ステークホルダー巻き込み型のDXが注目と言えるでしょう。
当協会でも、様々な事例や、ノーコードローコードを掛け算する業界アライアンス等形成していければと思っております。